網膜芽細胞腫に伴う様々な病気について

 

斜視
 眼球が正面からずれている状態を斜視といいます。視力が弱い、もしくは見えない眼球は、ずれていくことが多くなります。ずれの程度が固定すれば、手術によって正面へ戻すことは可能です。

 

眼底出血
 眼球の後方(網膜や硝子体)に出血することを眼底出血と呼んでいます。網膜の表面にわずかに出血する場合から、硝子体の中が血液で満たされるほどの重篤な場合もあります。医師は眼底を詳しく検査することによって、腫瘍の性質や再発の有無などを把握していますので、出血によって眼底が見えなくなることは大変不安な状態です。CTや超音波検査などで腫瘍の大きさの変化がある程度わかりますが、十分な治療をすることができません。数ヶ月しても出血が減らずに眼底が見えない場合、眼球摘出を考慮する必要があります。

 

緑内障
 緑内障という場合、大きく二つに分けられます。一つは開放隅角緑内障といって、眼圧が原因で視神経が徐々に障害される病気です。もう一つは閉塞隅角緑内障や緑内障発作といわれるもので、房水(目の中の水)が隅角から眼球外へ流出できなくなり眼圧が著しく上昇する状態です。網膜芽細胞腫の場合に問題となるのは後者で、大きな腫瘍が虹彩などを前方へ押し出して隅角が閉塞する場合と、虹彩表面に新生血管を生じて隅角面を覆ったり閉塞させることで生じます。眼圧が急に高くなると、目から目の奥の痛み、頭痛、吐き気などの苦痛を訴えます。小さな子どもの場合は、なんとなく元気がない、不機嫌などの症状しかない場合があります。治療により腫瘍が死滅すると緑内障も解消する場合がありますが、多くの場合は眼球摘出が必要です。

 

白内障
 目の中の水晶体というレンズが濁ってしまう状態が白内障です。濁りが少ない場合にはかすみやまぶしさを訴えます。濁りが強いと視力が低下するばかりでなく、医師も眼底の観察ができなくて腫瘍の状態がわからず、摘出が必要になる場合があります。白内障の手術は、もし眼球内に腫瘍が生き残っていた場合、手術により腫瘍細胞を全身に撒き散らす危険があるため、原則的には腫瘍の治療後数年以内は行いません。

 

放射線網膜症
 網膜に放射線があたると、網膜の細い血管が傷つき、出血したり、血液の成分である血漿が漏れだして網膜に浮腫を起こしたりします。また、血管が詰まることで網膜の酸素供給が不足して網膜の働きが悪くなったり、新生血管というもろい血管ができて大きな出血を生じたり、増殖膜という膜ができて網膜を引っ張り網膜剥離を生じることがあります。血管自体を治すことは難しいのですが、早い段階で異常を見つけてレーザー治療をすることで、進行を防ぐことができます。

 

三側性網膜芽細胞腫
 三側性というのは、両側性網膜芽細胞腫に脳腫瘍を生じた場合のことです。松果体などには網膜に似た細胞があるといわれていて、その細胞ががんになった状態で、転移ではありません。両側性の約3%に生じます。腫瘍が小さいときには自覚症状はありませんが、大きくなると水頭症といって脳室に水がたまる状態になり、ふらつき、頭痛、めまい、嘔吐などを訴えます。これらの症状が長引く場合には脳の画像検査を行う必要があります。脳腫瘍に準じた治療を行いますが、治すことは非常に難しいのが現状です。そのため両側性の場合には、自覚症状がなくても5歳頃まで定期的に脳のMRI検査を行うことが勧められます。

 

二次がん
 網膜芽細胞腫の転移ではなく、別の種類のがんが生じることを言います。遺伝性の網膜芽細胞腫の場合、体の細胞にもRB1遺伝子の変異があるため、関連するがんが生じてきます。腫瘍の種類としては肉腫という骨軟部腫瘍が多く、10歳代以降に頻度が増加し、20年で15%程度と報告されています。
 また、網膜芽細胞腫に対する治療も二次がんの原因になることがあります。放射線外照射療法を行った場合には、照射した範囲は約3倍がんが生じやすいといわれています。全身化学療法により白血病などの造血器腫瘍が生じるといわれていますが、実際にはあまり生じていません。そのため、現在網膜芽細胞腫の治療として、全身化学療法が一般的で、放射線治療を避けるようになっています。
 二次がんを生じた場合には、その腫瘍の種類や部位に応じた治療が行われます。今のところ、二次がんを早期発見するための良い検査法はありません。普段と異なる症状があり、持続したり悪化した場合に、その部位を精密検査するということが重要です。